オードリーの小部屋(3)

1958年彼女は「緑の館」、「尼僧物語」、「許されざる者」と次々に出演していきます。「緑の館」はメルの監督による作品です。これは、W.Hハドソンの「Green mansions」の映画化です。この作品は何度か映画化が試みられましたが、舞台設定の難しさなどがあり、見送られてきました。私はこの映画を見る前に、小説を読んだ事があります。見開きに、オードリーが子鹿を抱いた写真が載っていました。そして、小説を読み進んでいくうちに、森の少女、リマはいつしか私の中でオードリーに変わって行きました。今でも私の頭の中では、「リマ」イコール「オードリー」です。しかし、この映画の評判は散々でした。メルが自分の妻を美しく撮っただけの駄作という酷評でした。しかし、私はこの作品が大好きです。オードリーの美しさ、気品を一段と高めた貴重な作品だったと思うからです。

1959年の「尼僧物語」では、オードリーは肉体の苦悩をモノともしませんでした。過酷なアフリカロケ。苦難を忍び、そこから多くのものを得ました。そして「愛されるより、愛する事の方が大切だ」ということを学んだのです。おそらく、この時の体験が、後の、ユニセフの運動に従事するきっかけのひとつになったのでしょう。

尼僧物語

1960年1月。待望の一子、ショーンを授かります。2度の流産の末の子でした。彼女の幼年は家族に恵まれませんでした。5歳の時、両親が別居、10歳の時に正式に離婚しました。そんなこともあり、彼女は家族をとても大切にしていました。そして愛情のすべてをショーンにつぎ込んだのです。そしてそれがきっかけで夫婦のあいだの愛は、微妙に変化していきます。メルの関心が他の女性に向けられていくきっかけになってしまったのです。この年、彼女は唯一の西部劇、バート ランカスターとの共演で「許されざる者」に出演しました。しかし彼女は撮影中、落馬のため、大怪我を負います。数週間の病院生活を送ったのですが、彼女はけなげにも最後まで、やりとおしました。白人に育てられたインディアンの娘、という役柄を見事に演じました。

許されざる者