オードリーの小部屋(2)

麗しのサブリナ」の撮影が終わった頃、彼女はグレゴリーペックの紹介でメルファラーと知り合います。そして周りの反対を押し切って「オンディーヌ」でブロードウェイの舞台に立ちました。相手役は勿論、メルファラーでした。この舞台で彼女はそのまま恋に落ちました。舞台出演中、彼女はアカデミー賞主演女優賞決定の知らせを受けとります。授賞式は「オンディーヌ」の衣装のまま出席しました。そして、1954年9月、彼女はメルとスイスで結婚式をあげました。
 第3作目は、トルストイの小説、「戦争と平和」でした。 この映画でも彼女はメルと共演しました。彼女にとってメルは父親であり、恋人であり、そして理想の男性でした。まだ演技力のなかった彼女は、コスチュームが大切だと思いました。衣装をまとう事により別人になろうとしたのでした。そして映画の中で3人の男性をめぐる様々な形の恋愛を演じる事によって彼女は確実に成長して行きました。

戦争と平和
オードリー・ヘップバーン メルファラー
その後、彼女に転機が訪れました。1957年、フレッド アステアとの共演によるミュージカル出演です。「パリの恋人」(Funny face)監督に巨匠スタンリー ドーネン、衣装はもちろん、ジバンシーでした。彼女の魅力を一層引き立てたのは、写真家、リチャードアベドンでした。そして、アステアとの共演、アステアと踊るのは全女性の夢でした。「彼と踊るのは宙を舞うようでした」と後にオードリーは言っています。この映画の原題「Funny face」はオードリーの個性的な美しさに対する形容でした。か細く、しなやかな肢体、妖精を思わせるファンタスティックな雰囲気。それを表現する言葉として”funny”という言葉が使われたのです。しかし、彼女は自分の顔にコンプレックスを持っていました。「目は小さいし顔は四角、いつもメイクで直していた。」と彼女は後に言っています。
パリの恋人

同年、ゲーリー クーパーとの共演で「昼下がりの情事」(Love in afternoon)に出演します。監督は「麗しのサブリナ」のビリーワイルダー。衣装、ジバンシー、音楽、フランツワックスマン。主題曲、[魅惑のワルツ」(Fascination)はかなりヒットしたので御記憶の方も多いと思います。この映画の中で、彼女は金持ちのプレイボーイにほれる役でした、「ローマの休日」からこの作品まで、常に相手役は中年の男性でした。(私生活でも12歳年上のメルファラーと結婚)モンローに代表される官能的な女優に対して、オードリーは対極をなす存在でした。その事が一層中年男性との共演を促す一端になったのではないでしょうか。